私たちの生活と深く関わっている農業技術の研究
現状と課題、問題解決のための研究開発とその成果までを学ぶ小中高生向けの公開講座「すごいぞ!農業技術 研究者と出会う夏休み」(主催:農林水産省)が7月25日と8月2日に開かれました。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の研究者たちの話に約20名の小中高生が耳を傾けました。
第1回おじゃま虫を食べて大活躍!「とばないテントウムシ」のひみつ!!

(農研機構西日本農業研究センター
生産環境研究領域虫害管理グループ長)
第2回聞こえない!見えない!畑を守る音のバリアー「超音波装置の仕組み」

(農研機構農業技術革新工学研究センター
・次世代コア技術研究領域生産システムユニット長)

第1回のテーマは、畑の作物を食い荒らす害虫「アブラムシ」を退治してくれるテントウムシの話です。テントウムシはアブラムシをたくさん食べてくれますが、畑やハウスに放しても、そのほとんどは飛んで逃げてしまいます。飛ばないテントウムシがいれば、農家の人は助かると考えた農研機構・西日本農業研究センターの三浦一芸さんたちは、自然界にいるたくさんのテントウムシを観察し、ある日、飛ぶことが苦手なテントウムシを見つけました。飛ぶことが苦手なテントウムシを選んで、かけ合わせていくことによって、飛ばないテントウムシができるのではないか。三浦さんたちの挑戦の始まりです。それから調査と研究を進め、約13年かかって「とばないテントウムシ」の育成に成功しました。
「飛ばないという性質をもち、丈夫で安定して繁殖する『とばないテントウムシ』を作るには、まず自然界で飛ばないテントウムシをたくさん集め、それを何回もかけ合わせて選別するという地道な努力が必要でした」と三浦さんは振り返ります。
この研究成果は、化学農薬の使用を削減できる方法として注目され、2014年に商品化されました。現在、天敵を使った「生物農薬」として販売され、全国の農場などで活躍しています。
講座参加者からは、
などのコメントがありました。




第2回のテーマは、超音波で果物や野菜を害虫や病気から守る研究です。
果物や野菜に害を与える虫「ヤガ」は蛾のなかま。ヤガは夜行性の虫なので、夜間に果樹園や畑に飛んできます。昼間の果樹園や畑にはいないため、日中の農作業で退治することが難しく、農家の人はとても困っていました。
そこで、吉田さんたちが注目したのは、ヤガの天敵「コウモリ」です。コウモリは超音波を発して獲物を探し、ヤガなどの夜行性昆虫を食べます。これに対して、ヤガもその超音波を感じとる能力を持っていて、コウモリの超音波を感知すると逃げ出します。
コウモリの超音波を発する装置を果樹園や畑に置けば、ヤガは嫌がって飛んでこないのではないか、と考えた吉田さんたちは、装置の開発に着手します。コウモリの超音波の特性を徹底的に解析することで、最も効果的なパターンを解明し、ヤガから果物や野菜を守る超音波装置を開発しました。実際に果樹園で実験したところ、ヤガ類の飛来数は約1/20まで減少するなど、効果が確認されました。現在は実用化に向けて、装置のさらなる改良と試験を行っています。
また、吉田さんたちは、超音波の研究を重ねていくなかで、新たな発見をします。超音波の刺激を野菜に与えると、病気を防ぐ効果が現れたのです。「超音波装置には、作物をおいしく丈夫に育てる効果もあることがわかってきました。このように、超音波という物理的な刺激の使い道は、まだまだあるかもしれません。農業には面白い発見、発明がたくさんあります。」と吉田さん。超音波を利用し、環境に優しい農業を行うための研究はまだまだ続きます。
参加者からは、
などのコメントがありました。


発生装置が出す超音波をみんなで聞きました
